思ったこと
この時期に、ゴールデンカムイに出会えてよかったと思ったので感想を残そうと思います。
今の私にとっては、救いの物語でした。
登場人物の背景
最初、ゴールデンカムイを読み始めて思ったことはここまで深い話だと思っていなかったということ。
なんか、熊と戦ったり熊食べてヒンナヒンナしたり雑魚キャラがどんどん死んでいったり…。
アイヌとか幕末とかそんな知識が得られる漫画なのかな〜とか思ってた。
でも読んでいくほどに、登場してくる屈強な男たちの過去が見えてきて
すごく引き込まれた。登場人物みんな、それぞれ辛いと呼ばれる過去を持っている。
戦時中だし、まだ明治末期だし病気で家族を失った者や、戦争で大事な人を失った人がいる。そうだよなあ、失うことの連続の中でこの人たちは未来に希望を見出したり、諦めたり、誰かに盲信すること、なんらかの形で前に進もうとしてるんだよな。
そんな屈強な男たちに本当に心が揺らいだ。
私がもし、この時代に生きていたとして同じように大事な人を失った時
どんな風に前を向こうとするのだろうか?前に向けないかもしれないなとも思った。
中でも自分の大事なものを自ら切り捨てることで自分の存在を証明をしようとする尾形には共感の嵐だった。
尾形百之助
幼少期、母からの愛情に恵まれず間違った形で愛情の試し方を覚えた尾形は父や義理の弟にも手をかける。
けど、尾形のお母さんの壊れゆく気持ちもわからんでもないなあと思った。
愛した人が自分のことをもう愛していないと自覚した時どれだけの喪失感や怒りや悲しみがお母さんを襲ったのだろう。
そこにその愛した人が置いていった瓜二つのような顔の子供がいた時どんな気持ちで愛を注げばいいのかわからない。私だったら、毎日本当に泣きくれちゃうかもしれない。
昔の時代のことだから、階層の違う尾形のお母さんと花沢のお父さんは結ばれるのが難しかったのだろう。愛していても他の人と結婚するしかなかったのかもしれない。
尾形はお母さんを殺した(終わらせてあげたって思ってるのかな)後、義理の弟の勇作殿を殺してしまう。これは殺そうとか計画してたのじゃなくて殺してしまったのだと思った。この作品を読む中で尾形は誰からも愛されなかったのか…?とすごく悲しい気持ちになっていたのですが、違うと気づいた。義理の弟の勇作殿だけは「兄さま」と尾形を慕い、愛していた。尾形は、邪魔だとかなぜ自分にこのような態度をとるのか、当て付けなのかとか考えていたのだろうか。
日露戦争の最中、勇作殿の放った「人を殺して罪悪感を微塵も感じない人間がこの世にいて良いはずがないのです」という言葉。
このシーンですね。
これが尾形にとって、勇作殿と決裂した瞬間だったと思う。
勇作殿が、尾形を傷つけようとか、捕虜を殺したくないとかそんな気持ちでいった言葉ではなくて、心の底から「兄さま」を想って放った言葉だと信じています。
それは尾形もどこかで理解していたはず。だからこの先、何度も勇作殿の幻覚に苦しめられたり、アシリパの存在に勇作殿を重ねてしまうのでしょう。
最後に父親を手にかけて、また愛情を確かめようと試みますが父から出た言葉は尾形の闇を一層深めてしまうようなものだった。そして再確認したのでしょう。生を祝福されず愛されなかった人間はきっと何かが欠落するべきなのだと。
欠陥してるわけではなかったかもしれないのに、愛されていない人生などではなかったかもしれないのに、人は自分でそう思い込んだ瞬間そのそこへと向かっていってしまう。
物語は進み、アシリパと行動を共にする中で尾形は何度もアシリパの中に勇作殿を感じるようになる。アシリパは尾形を信用していなかったかもしれませんが、大事な仲間としての愛があったと思う。アシリパさんの優しさは勇作殿に通ずるものがあったのだろうか。一緒に獲物を探し、一緒に食事をして眠る。会話の中でも、愛が何かを気付き自覚していく尾形。
そうだよ、愛ってそんな感じなんだよ尾形!!!と私は物語の中で何度も思った。
そして、最後の列車での杉本、アシリパと闘うシーン。
ここで最後に救われた、と自覚した尾形に私が救われた。
勇作殿からの愛を受け取ってくれてありがとうと思った。
救いとは?
私自身、人生に苦悩した時に「ああ、救われたな」と思った瞬間を何度も繰り返してきた。救われることで、前ヘ向き進むことができるからだ。
今回、私は尾形の以下のシーンで救われたと思った。
「不幸に値する人間、幸せになれない人間」だと思い、諦めがついたことがたくさんあったからだ。
妥協できた、これでいいと思えた。
でも、最後までこんな自分の勝手な主観を拗らせて諦めて生きるのはやめようと思えた。
もう取り返しがつかないことをしてきた尾形にとって最期が「死」というのは救いだったのかもしれない。
最後に
本当にいろんなことを考えさせられた作品でした。本当にいい作品です。余裕ができたら単行本を購入してまたゴールデンカムイの屈強な男たちと冒険をできたらいいな。
全話無料公開してくださってありがとうございました。